美学者、造形評論家である三井 秀樹さんの著書「美の構成学」を読みました。創作のインスピレーションと、クリエイティブ・コーディングの即戦力となる知識を得られた読書でした。
読書の動機は、データビジュアライズデザイナーの山辺真幸さんからお薦めいただいたことです。この本は、クリエイティブ・コーダー senbaku さんの「CreativeCoder推し本リスト」にも掲載されています。
【CreativeCoder推し本】
https://senbaku.github.io/
ご推薦ありがとうございました。
構成学とは?を語る本
全体を通して「構成学とはどのような学問か」を語る本です。
構成学とは「美術やデザインの世界で美しい形や使いやすい形を作り上げるための原理体系」であり、「日常の生活環境をより豊かに楽しくするための生活美学」でもあるとのこと。
美しい形を作るための原理体系ということは、これを学べばクリエイティブ・コーディングにおいて「どう書けば美しい形を作り出せるか」を、感覚ではなく理屈で導き出せるようになるということですね?センスに自信のない私にとって、これは胸アツの福音です!
その構成学成り立ちの歴史として、バウハウスのことが、ほぼ2章丸々使って詳しく記述されています。構成学の基盤となった以下のようなバウハウスでの活動内容はとても面白く、叶わぬ願いですが、入学してそこで学びたいと思いました。
- 造形(形体、色彩、材料、テクスチャ)文法
- タイポグラフィ
- グラフィック・デザイン
- 写真表現、光の造形
- 舞台芸術
- 建築
クリエイティブ・コーディングの即戦力になった
4章の「配色の秘訣」には、色を使う上で綺麗に見せるコツが具体的に記載されていて、これはクリエイティブ・コーディングでの即戦力となる情報でした。
- 近似色相による類似調和、補色による対比調和
- 各色すべてに特定の色を混ぜることによって色調を統一させる
- 思い切って明度を下げると、重厚な雰囲気になる
- ダルトーンに高彩度色をアクセントで加えると、ビビッドで洒落た感じになる
などなど、読んでいてヨダレが出るほどの嬉しい内容です。
3章の「造形の秩序」では、黄金比、等量分割、数列分割、シンメトリーやパターンなど、画面上をどう分割するか、あるいはオブジェクトをどう配置するかに関する引き出しを増やすことができました。
その他、日本の数理性と偶発性を活かした造形、シンメトリー、アシンメトリー、オーガニックを縦横に駆使する日本独特の美に関する記述には大いに刺激を受けました。今後の自分の研究のネタ、方向性が見えた思いです。
創作の知識とインスピレーションを得られる本
長年「アートって何かしら?」という疑問を抱いている私には、バウハウス初代学長グロピウスの「芸術家とは高められた工芸家の姿である」という言葉や、著者の「装飾はあくまで模様であるが、芸術作品は作者の主体性を表現する内容の主題性を持っている」という言葉が印象に残っています。
この本は、クリエイティブ・コーディングの創作に活かせる多くの知識とともに、アートとは何か?について考える指針のひとつを与えてくれる本でした。