国立西洋美術館館長も務められた美術評論家、高階秀爾さんによる解説と共に、日本の現代アート30作品を観る本、「ニッポン現代アート」を読みました。
読みましたというか、鑑賞しました。観ごたえ、読みごたえ、十分の一冊です。
A5サイズ 133ページの中に、30点の作品とその解説を収録。作品は全てカラーで、見開き 2ページと、それとはまた別の 1ページとで作品の全体と一部分の拡大が収められています。
作品のサイズや所蔵美術館、作者略歴などの情報は巻末にまとめられていて、作品そのものの鑑賞に没入できる作りでした。
解説があってこそ見えてくるもの
現代アートを観て、なんか「いい」んだけど、どこがどう「いい」のか。なぜ自分がそう感じるのか。他人に説明はおろか、自分の中でさえ、ぼんやりとでも何か「これ!」といったものを掴むことができず、いつも『なんだろなぁ…なんだかなぁ…』という気持ちになって終わっていました。
そんな私にとって、この本の作品解説は、道を一つ示してくれるとてもありがたいガイド役でした。
一度作品を隅々まで見た後に解説を読むと、目に入っていたはずなのに見えていなかったこと、え?そうだったっけ?と気付かされることが多くあります。同じ作品が違って見えてくることも。
もちろん、なるほどということだけでなく、『あれ?そうかな?』と感じることもありました。でもそれは、示された「見方」に触発を受けて私の感性が動き出した結果であり、解説に導かれて私自身の「見方」が生まれたということなのだと思うのです。
どう観たらよいのかよく分からない私に、さりげなく見方の手ほどき、稽古をつけてくれる、そんな良き先生のようでもありました。
特に気になった作品
李禹煥さん 「照応 Correspondance」
【徹底解説】李禹煥(リ・ウファン)とは?「もの派」とは? | Euphoric
正直、ぱっと見、あまり好きなタイプの作品ではありませんでした。しかし、解説を読んで 2つのオブジェクトの位置、左右上下のマージンがすごく気になりだして、見え方が大きく変わった作品です。
解説を読む前と後でまるっきり別の作品に見える、とても不思議な感覚を味わいました。
清川あさみさん 「HAZY DREAM」
HAZY DREAM(2009) | Art | 清川あさみ - Asami Kiyokawa
写真に刺繡を施して、それを写真に撮って、それにまた刺繍して、を繰り返した作品。
この制作手法は面白い!クリエイティブ・コーディングにも応用できそうです。解説してもらえなかったら、この面白さには絶対気づけなかったでしょう。
岩尾恵都子さん 「朝顔」
岩尾恵都子 2014.10 - YUKIKOKIKUCHI
これは単純に大好きな絵です。色の変化具合や、見てるうちに大きいんだか小さいんだかよく分からなくなってくる感覚に惹かれました。「赤岳」という作品も大好きです。
同シリーズで他にも2冊
この本は、講談社のPR誌「本」の表紙を飾った作品と、その解説である「現代アートの現場から」という連載記事を単行本化したものです。
同シリーズは他にも「日本の現代アートをみる」「ニッポン・アートの躍動」と 2冊が書籍化されています。