数学者であり、ベストセラー「素数の音楽」でも知られるマーカス・デュ・ソートイの著書「レンブラントの身震い」を読みました。
クリエイティブ・コーディングに興味のある方には、原題である「The Creativity Code」に興味を惹かれるのではないでしょうか。
とても読みやすい、サイエンス・エッセイ
本書は、「創造性や芸術とは一体何か」「機械には創造性があるのか」といった問いに対する答えを探求するため、豊富な引用や実例を用いながら、様々な視点で考察を展開していくサイエンス・エッセイです。
文章は非常に読みやすく、引っかかることなくスラスラと読み進めることができます。翻訳の質も素晴らしく、原著の意図やニュアンスが適切に伝わってくる印象でした。
創作に関しての示唆に富む
筆者は平易な言葉で要点をシンプルに説明するのが上手く、喩えも的確でわかりやすいです。随所に散りばめられたさりげないユーモアも楽しく、アルファ碁が世界チャンピオンとの戦いの第二局で打った驚きの手などのエピソードも魅力的です。久々に「一度読み始めると止まらない」という感覚を味わいました。
そして、創作する人にとって、この本は面白いだけでなく、創作に関する多くの示唆が詰まっている本だと思います。芸術作品と規則性の関係や、コンピュータを使った芸術創作の動機、ランダム性と創造性の関係についての考察など、多くの洞察を得ることができます。
技術の進歩により、AIの利用はますます広がっており、その中には芸術的な表現を生み出すものも出てきています。2020年の出版であり、執筆時にはまだ知られていなかっただろう chatGPT や Stable Diffusion などの革新的な技術の進展に対しても、この本は創造性の観点からの洞察を与えてくれるでしょう。
創造性とは何か
「レンブラントの身震い」は、芸術とは何か、創造性とは何かという難解なテーマに光を当てた一冊です。創作する人々にとって、この本の内容は刺激的であり、新たな視点やアイデアを提供してくれます。芸術作品が生まれるプロセスや創造性の源泉について考えることで、自身の創作活動や芸術鑑賞の視点がより深まることでしょう。