お彫刻の本「シドロモドロ工作所のはじめてのお彫刻教室」を読みました。
著者紹介
著者は彫刻家の田島享央己さん。「イカピエタ」の作者、でお分かりになる方も多いのではないでしょうか。
田島享央己さん Blog 「シド工日記 (しどこうにっき)」 イカピエタについて より転載
どんな本か
フルカラー、127ページのボリュームに、独特な雰囲気の作品写真が溢れるほど掲載されています。
これら作品写真を見ているだけでも大満足ですが、「無駄話」と題されたエッセイの数々が、読んでいて吹き出してしまうレベルでとても面白いです。
そして、ただ面白いだけでなく、この本からは、制作における大いなるヒントも(ごめんなさい、正直に言って、思いがけず)得ることが出来ました。
何を得たか
制作に活かせる有益な言葉を本文から抜粋し、要約するかたちで引用させていただきます。全文はぜひ本でお確かめください。
制作時の心持ち
上達への道
とりあえず彫ってみます。失敗します。それなら次はこうしてみようと、また彫り始めます。これが上達へのただ一つの道なのです。失敗だけが彫刻の先生だと思うのです。
やめないということは、夢中になること。夢中になるとは「大好き」であること。物作りが大好きで、頭を叩くとコーンと澄んだ音がするくらいの脳味噌空っぽな与太者が上達するのです。
彫刻と違ってクリエイティブ・コーディングはやり直しや元に戻すことが容易ということもあり、私は失敗は恐れず、むしろ楽しめています。
あとはきっと、打算や下心の無い、脳味噌空っぽの域に達することができるか。
完成とは
ダメなところが自分でわかり切ってしまい、それに気づいた時、がっかり暗い気持ちで「完成」とする。そして、「こんどこそ!」とまた作り始める。
「がっかり暗い気持ちで完成」は、私も思い当たるところがあります。でも、「ダメなところがわかり切って」かというと、どうだったでしょう。手詰まり?妥協?で終わっている気がします。
色塗りの考え方
田島享央己さんのお彫刻は、造形もさることながら、多くの色を使った塗りも独特で、そこにも大きな魅力を感じます。
様々な色が入っているのに、白猫がちゃんと白いのが不思議なのです。
田島享央己さん Blog 「シド工日記 (しどこうにっき)」 日本橋三越本店で個展を開催します より転載
自然界で物が存在する以上、他の物の反射光から逃げることはできない。
本の中では、真っ白な部屋に入ってきたレインボーカラーの全身タイツのおじさんを例にして、このことの説明がなされています。
抽象化とは
「滅多に無いヒントをいただけた!」と、ドキドキしたのがこちらの一文。
抽象化とは、エッセンスを取り出し、元よりもイキイキとさせること。
抽象的なので、具体的にどうやったらいいのか今はまだわかりませんが、 表現していく上での考え方の指針を得ることが出来たと感じています。
あとがき
ユニークな作品をじっくり見たいという動機で手に取った本でしたが、それ以上のものを得ることが出来て、大大大満足の読書でした。
どんな文章、どんな作品かは、田島享央己さんの Blog や Twitter でもご覧いただけます。
きっと読んで楽しいだけでなく、あなたの制作に役立つヒントを沢山得られる本です。
たぶん得られると思います。
得られるんじゃないかな…。
ま、ちょっと覚悟はしておけ。